
製品開発の初期試作の段階では、「試作品が重すぎる」「加工コストが高い」「納期が長い」といった課題が頻発します。そんな中、軽さと強度を両立したい場面では、従来の板金・切削加工だけでは限界を感じる設計者も多いでしょう。
本記事では、初期試作において、3Dプリントなど、数の工法を比較検討しながら軽量化とコスト低減を実現する方法を紹介します。
目次
初期試作に立ちはだかる課題
~重量問題と複雑形状のコスト課題~
初期試作では、量産を意識した設計よりも「とりあえず形にする」ことが優先されがちです。そのため、構造が過剰に頑丈で重くなったり、補強のために金属部品を追加したりするケースも少なくありません。
また、軽量化を意識して形状を複雑にすると、切削加工では工具が届かず、板金では溶接箇所が増えるなど、加工コストとリードタイムの増大につながります。結果として、試作段階で「軽くしたいが、加工費が跳ね上がる」というジレンマに直面します。
試作初期に最適な加工法とは?
製品開発の初期段階では、軽量化・強度・コスト・納期といった複数の要件を同時に検討する必要があります。そのため、板金・切削・3Dプリントなど、どの工法を採用するかが試作の品質とスピードを大きく左右します。
近年は、3Dプリントによって軽量化や複雑形状の再現がしやすくなった一方で、必ずしも3Dプリントが最適とは限らず、工法ごとの特性を踏まえた使い分けが重要になっています。
まずは、代表的な3つの工法の特長を整理し、試作段階でどの選択肢が最適になり得るのかを比較してみましょう。
| 加工方法 | 特長 | メリット | デメリット |
| 板金加工 | 薄板を曲げ・切断・溶接して構造を形成。外装カバーやブラケットなどに適用。
|
・短納期かつ低コストで試作可能 ・量産性が高い |
・複雑な凹凸や曲面形状の再現が難しい ・剛性確保には補強が必要 |
| 切削加工 | PA・PCなどのエンプラから金属まで幅広い材料で高精度試作可能 | ・寸法精度が高い ・強度評価に適し、実機試験に使える |
・加工時間が長い ・材料ロスが多い ・複雑形状ではコスト増 |
| 3Dプリント造形 | 積層造形で自由度が高く、中空構造や内部リブを一体成形可能。 | ・寸法精度が高い ・強度評価に適し、実機試験に使える |
・造形サイズや精度に制約
・表面仕上げが必要な場合あり ・量産には不向き |
軽量化への取り組み
軽量化は、製品全体の性能向上・コスト削減・加工性向上につながる重要な設計テーマです。特に、板金部品への置き換えや 3Dプリントによる一体成形は、従来工法では難しかった軽量化設計を実現しやすく、幅広い産業で採用が進んでいます。
以下、軽量化の基本アプローチである「材料変更による質量削減」と「3Dプリントによる一体形状化」の2つの観点から、実務に直結する軽量化方法を解説します。
「材料変更による質量削減」
金属から樹脂への材料変更で軽量化の第一歩
金属板金から樹脂への変更は、最も実行しやすい軽量化アプローチです。一般的に鋼板の比重 7.8に対し、エンジニアリング樹脂は 1.0〜1.4 程度と大幅に軽量であるため、形状条件が満たせる場合には 40〜80% 程度の質量削減も可能です。
材料変更による主なメリット
- 質量の大幅削減:板金→樹脂化で 1/3〜1/6 の重量化が一般的
- 加工点数の削減:曲げ・溶接・スポットなど複数工程を一体化できる
材料変更による主なデメリット
- 強度や耐熱の制約:金属より剛性・耐熱が低く、荷重部品には不向き
- 経年劣化:吸水・紫外線などで物性が変化しやすい
適用しやすいケース
- 荷重が小さいカバーや筐体
- 金属疲労や腐食が課題となっている部品
※力学的要件(剛性・耐熱・寸法精度)が厳しい部位は樹脂だけでは対応困難なため、繊維強化樹脂・ハイブリッド構造での検討が必要です。
「3Dプリントによる一体形状化」
中空設計で軽量化の第二歩
中空設計は、部品や構造体の内部を空洞化することで、軽量化やコスト削減を実現する設計手法です。特に機械設備や製品開発においては、強度・剛性・加工性のバランスを取ることが重要です。
中空設計のメリット
- 質量の削減:内部を空洞化することで部品の重量を大幅に軽減できる
- 材料コストの削減:使用材料を減らすことで、コストダウン効果が大きくなる
中空設計のデメリット
- 材料の剛性や耐熱に限界があり、荷重部品では追加補強が必要になりやすい
- 空構造は、溶接や複雑な切削、成形技術を要する場合があり、製造工程が複雑化
効果が大きいケース
- 治具やアームなど、重量が作業性や繰返し精度に影響する部品
- 車載やドローン、ロボットなど、軽量化が直接性能向上につながる用途
- 金型レスで試作したい場合(量産前の軽量化検証にも最適)
中空設計は、3Dプリント技術との相性が非常に良い点も見逃せません。
3Dプリントでは、従来の加工技術では困難だった複雑な中空構造を高精度かつ効率的に造形することが可能です。これにより、中空設計の効果を最大限に引き出しつつ、軽量化と機能性を両立できるのが特長です。
3Dプリントの高強度材料利用で耐久性維持を実現
軽量化を追求すると、どうしても「強度低下」という課題がつきまといます。しかし、3Dプリント技術を活用すれば、軽量化と耐久性維持を両立することが可能です。
高強度材料の選定や造形工法の工夫によって、従来の加工方法では難しかった複雑な中空構造や補強リブを一体成形でき、設計自由度と性能を同時に高められます。
3Dプリントで使用できる高強度材料
3Dプリントでは、金型を使わずに強度を確保できる材料が増えており、試作から実用部品まで幅広い用途で採用が進んでいます。特に近年は、高強度樹脂材の性能向上が著しく、金属を使わずに十分な耐久性を得られるケースも増えています。ここでは、代表的な高強度材料とその特長を樹脂中心に紹介します。
高強度材料一覧(3Dプリント対応)
| 材料名(樹脂) | 特長・メリット | 主な用途・方式 |
| PA(ナイロン) | 耐衝撃性・耐摩耗性に優れる。軽量かつ靭性が高い。寸法安定性も良好(PA12/PA11)。 | 治具・カバー・機構部品など多用途。SLS/MJF方式。 |
| PC(ポリカーボネート) | 高い耐衝撃性・耐熱性。透明性あり。 | 産業機器筐体・ブラケット・固定具・光学用途。FDM方式。 |
| ABS+CF(カーボンファイバー強化ABS) | カーボン混合で剛性向上。軽量で反りも抑制。 | 機械的強度が必要なパーツの試作。 |
| PLA+CF | カーボン強化で高剛性。寸法精度が高い。 | 軽量治具・ホビーパーツ・構造確認モデル。耐熱性は低め。 |
| PET-G+GF(ガラス繊維強化PET-G) | 耐薬品性・耐水性。ガラス繊維で曲げ強度・剛性向上。 | 屋外使用・工業用途。FDM方式。 |
| 材料名(金属) | 特長・メリット | 主な用途・方式 |
| マルエージング鋼(MS1) | 高強度・高靱性。熱処理でさらに強度向上。 | 金型、治具、構造部品。DMLS方式。 |
| チタン合金(Ti6Al4V) | 優れた比強度・耐食性。軽量かつ高強度。 | 航空宇宙、医療部品。 |
| アルミ合金(AlSi10Mg) | 軽量・高熱伝導性。後加工性も良好。 | 放熱部品、ブラケット、筐体。 |
強度が高い3Dプリンタの造形工法
軽量化を進めるうえで課題となるのが「強度の確保」です。
近年の3Dプリントでは、材料性能の向上に加え、造形工法そのものが進化したことで、切削加工に匹敵する強度を持つ部品を造形できる技術が増えています。
ここでは、高強度な造形が可能な主要工法を整理します。
主要3Dプリント造形工法一覧
| 工法名 | 概要 | 主な材料・特長 |
| 光造形(SLA/DLS) | 液槽に紫外線硬化性樹脂を入れ、液面に向かって上面または下面から光を照射し硬化積層する。 | ABSライク・PMMAライクなどの紫外線硬化樹脂が出力可能。 |
| 粉末造形(SLS/PBF/MJF) | 粉末状の素材にレーザー照射、または加熱エネルギーで溶融結合させ積層。 | PA・PP・PPSなど高強度・高靭性樹脂が出力可能。 |
| 熱溶解積層(FDM/FFF) | 樹脂フィラメントやペレットを溶融し、ノズルから押し出し積層。 | 高強度PA-CF材料・ABS・PC-ABSなど熱可塑性材料が出力可能。 |
| 金属造形(LB-PBF) | 金属粉末にレーザーを照射し溶融凝固させ積層。 | アルミ・ステンレス・インコネルなど造形品の機械強度が高い。 |
| 金属造形(BMD) | 金属粉末とバインダーを混錬した材料をノズルから押し出し積層。脱脂・焼結するMIM技術を応用。 | 純銅やステンレスが出力可能。 |
これらの工法は従来の切削材に匹敵する強度を持ち、かつ複雑構造の一体造形が可能な点で、設計自由度を大幅に高めます。
まとめ
試作初期では、軽量化・強度・コスト・納期を同時に検討する必要があり、どの加工法を選ぶかが開発効率を大きく左右します。
板金・切削・3Dプリントにはそれぞれ適した役割があり、目的に応じて使い分けることが重要です。 特に3Dプリントは、中空構造や複雑形状を活かした軽量化設計に強みがあり、高強度な材料や造形方法と組み合わせることで、重量と強度のバランスを取りやすくなります。
設計自由度の高い試作初期段階で工法特性を正しく理解し、最適な手法を選択することが、後工程の手戻り防止と開発スピード向上につながります。
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製作事例
メビーマーケットプレイスでは、以下のような3Dプリント試作の事例があります。
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部品名 | ベゼル |
| 造形工法 | 粉末造形(SLS/PBF/MJF) | |
| 材質 | ナイロン12 | |
| サイズ | X230 * Y130 * Z20 mm | |
| 数量 | 1個 | |
| 単価 | 20,000円 | |
| 出荷日 | 3日目 |
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部品名 | マニホールド |
| 造形工法 | 熱溶解積層(FDM/FFF) | |
| 材質 | ABS | |
| サイズ | X250 * Y150* Z120 mm | |
| 数量 | 1個 | |
| 単価 | 50,000円 | |
| 出荷日 | 7日目 |
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部品名 | 配管継手 |
| 造形工法 | 金属造形(LB-PBF) | |
| 材質 | SUS316L | |
| サイズ | X50 * Y50* Z35 mm | |
| 数量 | 1個 | |
| 単価 | 51,000円 | |
| 出荷日 | 7日目 |


